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賃貸アパートの消防設備点検について解説!点検は義務?費用相場は?
賃貸アパートの消防設備点検について解説!点検は義務?費用相場は?
賃貸物件を経営していると、アパートの共用部分ではさまざまな点検義務が発生します。その中の一つが「消防設備点検」です。
「X月X日に消防設備点検を実施します。ご協力をお願いします」といったお知らせが、ポストに投函されたりアパートの掲示板に掲示されたりしているのを目にしたことがあるかもしれません。これは、消防設備点検を実施する際の案内です。
しかし、賃貸アパートを所有するオーナー様の中には、管理会社にすべてを任せているために、「消防設備点検」とはそもそも何を指すのか、実施する義務があるのか、具体的に何を点検するのかをご存じない方も少なくありません。現状を正しく理解することは、賃貸管理の質の向上にもつながります。
そこで今回は、「消防設備点検」について詳しく解説します。
賃貸アパートにおける消防設備点検とは
消防設備が設置されている建物では、「消防用設備等点検報告制度」に基づき、これらの設備を点検する義務があります。
マンションやアパートなどの共同住宅にも「防火対象物」として位置づけられる消防設備が備わっています。これらの設備は、万が一火災が発生した際に住人の命を守る非常に重要な役割を果たします。そのため、常に正常に機能する状態を維持することが求められます。
この目的を達成するために、消防設備の定期的な点検や確認、そしてその結果を報告する義務が法律で定められています。
消防点検の種類、頻度・内容について
総合点検
1年に一度、機器およびそれに関連する電子機器を実際に作動させて、機能を確認する点検を行います。この点検では、機器単体の確認よりもさらに詳細な部分までチェックを実施します。
例えば、通常の機器点検に加えて、電子機器の配線状況や地区音響の音量(デシベル)の測定、誘導灯の明るさ(照度)の確認などを行います。
機器点検
半年ごとに、設備の外観や簡単な操作を通じて、機器が正常に機能しているかを確認する点検を行います。
例えば、消火器の有効期限を確認したり、避難はしごが適切に動作するかをチェックするなどの作業が含まれます。
点検報告
一般的な賃貸物件では、3年に1回、消防署に点検結果を報告する義務があります。
この義務を怠ると、30万円以下の罰金などの罰則を受ける可能性があるため、定期的に点検を行い、報告を忘れないようにしましょう。ただし、1階に店舗が入っている集合住宅や規模の大きなアパートなど、特定の建物については、1年に1回の報告が義務付けられています。
点検の義務を負う人とは
消防法17条により、消防設備点検の義務を負うのは下記のいずれかになります。
- アパートのオーナー(所有者)
- アパートを管理する者(管理者)
- 住んでいる入居者(占有者)
消防設備点検に関しては、オーナーや管理会社が責任を負うのは当然ですが、入居者にも協力する義務があります。
実際には、多くの場合、管理会社が専門業者に点検を委託しており、入居者はそのスケジュールに従い協力する形となります。
入居者の立会いについて
ただし、入居者の点検立会いは「努力義務」とされており、法律で罰則が科されることはありません。
とはいえ、万が一火災が発生し、点検を怠ったことが原因で被害が拡大した場合には、損害賠償を求められる可能性があります。そのため、可能な限り点検への立会いに協力することが望ましいでしょう。
有資格者による点検が必要なのか
延べ面積が1000㎡未満のアパートでは、法律上、資格のない管理人やオーナーが直接点検を行うことも可能です。消防設備の中でも、消火器・自動火災報知器(特定小規模施設用)・非常警報器具・誘導標識の点検は比較的簡単に行うことができ、有資格者以外の点検でも問題ありません。
建物の規模や用途に応じて必要な消防設備は法律で規定されていますが、物件が比較的小規模で、設置されている消防設備が上述のものに限られている場合、消防設備点検はオーナーや管理者などの建物関係者が実施することができます。
しかし、実際には専門知識がない人が点検を行うのは難しく、また消防署も有資格者による点検を推奨しているため、実際には資格を持つ専門家による点検が一般的です。
消防設備点検の対象・種類
消火器などの「消火設備」
消防設備とは、火災が発生した際に水や消火剤を使用して消火するための機器や設備のことです。消火器やスプリンクラーなどが代表的な例ですが、ここでは特に一般的な消火器について説明します。
消火器は水や粉末を噴射して火を消す器具です。点検の際は、消火器にかかる圧力が適切かどうかを確認します。持ち手付近のオレンジ色の矢印が黒い線の範囲内に収まっていれば正常です。また、有効期限もチェックする必要があり、製造から10年が経過した消火器は交換しなければなりません。
避難はしごなどの「避難設備」
避難設備とは、火災が発生した際に避難するために使用する設備で、避難はしごや誘導灯、救助袋、滑り台などが含まれます。特にアパートなどの集合住宅では、ベランダに避難はしごが設置されていることが多いです。
これらの設備は、火災時にすぐに使用できる状態であることが求められるため、周囲に障害物がないか、設備が正常に機能するかを確認する必要があります。特に屋上から緩降機を使って降りるなど、避難器具の点検には専門的な知識が必要で、誤った使い方をすると危険を伴うため、できるだけ有資格者に点検を依頼することが推奨されます。
火災警報器などの「警報設備」
火災が発生した際に、それを感知して警報を鳴らす設備は「警報設備」と呼ばれます。代表的なものとして、天井に設置された火災警報器やガス漏れ火災警報設備、非常ベルなどがあります。
特に火災警報器は、設置の有無が命に大きく関わる重要な設備です。命を守り、被害を最小限に抑えるためにも、実際に警報器を作動させて、その機能を確認することが必要です。
連結送水管などの「消火活動上必要な施設」
火災が発生した際に、消防隊が消火活動を行うために必要な設備を指します。これらの設備は迅速で円滑な消火活動を支えるために欠かせないもので、連結送水管、排煙設備、非常用コンセント設備などが含まれます。特に、高層階や地下階など、消火活動が難しい場所で使用されることが多いです。
賃貸アパートなどの消防設備点検費用の目安
消防設備点検の費用は、物件の規模や設備の種類によって点検内容や点検箇所の数が異なるため、費用に大きな差があります。おおよその目安として、10戸未満の物件は小規模、20~50戸未満の物件は中規模、50戸以上の物件は大規模として、以下のように分類されます。
物件の規模 | 費用の目安/年間 |
小規模 | 8千円~1万5千円 |
中規模 | 2万5千円~5万円 |
大規模 | 7万円~ |
一般的にアパートは10戸未満であることが多いため、年間の点検費用は1万円~1万5千円程度が一般的です。一方、部屋数が50戸前後の標準的なワンルームアパートタイプの場合、年間費用は7~10万円程度が相場となります。また、消火器の交換などが必要な場合、その分の追加費用が発生します。
消防設備点検は法令の定めに従いしっかりと行うことが大切です
まとめ
適切な点検を怠ったために火災の被害が拡大した場合、オーナーの責任が問われることがあります。そのため、消防設備点検は法令に従ってしっかり行うことが重要です。違反すると罰則が科されることもあるので、定期的に点検を行い、3年に1回の報告を忘れないように注意しましょう。
アパートのような小規模な賃貸住宅では、オーナー自身が点検を実施することも可能です。この記事を参考にして、点検を行ってみるのも良いでしょう。しかし、比較的大規模なアパートで有資格者による点検が義務付けられている場合は、点検にかかる費用を予め予測して確保しておく必要があります。
消防設備は、火災発生時に入居者の命を守るための大切な装置です。定期点検の時期だけでなく、日常的に設備の状態を確認したり、周囲に不適切な物が置かれていないか気を配ったりすることが重要です。
株式会社LCマネジメント
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