COLUMN
賃貸管理で放置自転車に張り紙は貼ってもいいのか?対応の流れと防止策について
賃貸管理で放置自転車に張り紙は貼ってもいいのか?対応の流れと防止策について
賃貸マンションでは管理をする中で課題の一つとして、放置自転車問題があります。
駐輪スペースに限らず、マンション敷地内に、所有者が不明確なまま放置されている自転車が増えることによる対応について、お問い合わせも多くいただきます。
今回はその対応、防止策についてお話していきます。
なぜ、放置自転車が増えていくのでしょうか
駐輪場や敷地内に見られる放置自転車増加には、主に以下の3つのケースが考えられます。
既存入居者によるもの
既存の入居者が新しい自転車を購入し、使わなくなった自転車をそのまま置いている場合があります。新旧の自転車が同時に存在することで、スペースの浪費や共同スペースの利用に支障をきたす可能性があります。
過去の入居者の残したもの
過去に住んでいた入居者が引っ越しの際に自転車を持っていかなかった場合、その自転車が敷地内に残されてしまいます。所有者が不明確なままであるため、これらの自転車が増えると管理上の課題が生じる可能性があります。
外部の人によるもの
敷地内に外部の人が自転車を持ち込み、放置するケースも考えられます。これは管理組合や賃貸管理会社が把握しにくく、不正確な所有情報を持つ自転車が混在することが懸念されます。
これらのパターンの中で、特に入居者によるものが多い可能性が高いです。問題解決には、まず管理組合や賃貸管理会社が住民に対して周知徹底を行い、不要な自転車の撤去手続きや整理を促すことが必要となってきます。
放置自転車を未然に防ぐには
放置自転車問題を防ぐためにまずは以下の対策を取り入れることが、望まれます。
駐輪ステッカーの導入
入居者に対して駐輪ステッカーの発行を行い、これを自転車に貼り付けてもらうよう促すことが重要です。ステッカーには順番や部屋番号を記載し、所有者の識別を容易にします。
また、ステッカー発行の枚数制限を設けている管理会社もあります。枚数制限を設けることにより、自転車の過剰所有の抑制、登録・管理の効率化等のメリットも見込まれます。
入居者一覧の作成
入居者の一覧を作成し、それぞれの駐輪ステッカーの番号と対応させて記録します。これにより、特定の自転車が誰のものかを容易に確認できます。
入替時や所有台数が増加した再の履歴も記録しておくことで、所有者の特定につながります。
巡回とステッカーチェック
定期的に駐輪エリアを巡回し、ステッカーのない自転車がないかを確認することも大切です。ステッカーのない自転車は即座に特定し、順次撤去していくことを入居者さまに周知していくことも効果が見込まれます。
これらの対策を徹底することで、入居者様による駐輪スペースの混雑や放置自転車問題を未然に防ぐことに繋がります。
放置自転車対応手順
放置自転車といっても法律的には誰かの所有物になりますので、所有者の承諾なく処分してしまうと「器物損壊罪」になってしまいます。
器物損壊罪とは🔍 器物損壊罪とは、故意に他人の所有物を壊す、もしくは使えない状態にした場合に 成立する犯罪のことです。 器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。 |
そのため、ステッカーが貼っていないから、ずっと放置されているからという理由だけで処分をするのはとてもリスクが高くやめておいたほうがいいでしょう。
そういったリスクを回避しながら放置自転車の解決に向けた手順は以下の通りです。
①撤去予告の張り紙を物件掲示板、自転車に貼る
最初に、以下のような内容の撤去予告の張り紙を物件に掲示、放置自転車と思われる自転車にも直接貼ります。
上記のような文章を自転車のハンドル部分に巻き付けてホチキス止めする方法です。
梅雨時や台風シーズンは紙が破れて取れてしまうことがあるため、その時期を避けて実施しましょう。
台数が少ない場合はラミネートしたものを巻き付けるのも良いと思います。
必ず入居者様が通行するエントランス付近へ掲示、直接自転車に張り付けることで、各入居者への周知を図ることが容易となります。また、自転車に直接貼り付けることで、自転車所有者が正しい駐輪スペースへの移動、自転車管理についての相談をすることも考えられるので、撤去有無の判断にもつなげることができます。
自転車に張り紙を貼ってもいいのでしょうか🔍 放置自転車に張り紙を貼ることは、状況によって許されるかどうかが異なります。 所有権の問題 放置自転車でも、その自転車の所有者が存在します。無断で張り紙をすると、その所有者の財産に対する損害やプライバシーの問題が生じる可能性があります。特に、張り紙が自転車にダメージを与える場合は、トラブルにつながることが考えられます。 公道や私有地の違い 公道上の放置自転車に関しては、地方自治体や警察が処理する権限を持っていることが多いです。私有地に放置されている場合でも、勝手に自転車を動かすことにより、破損させたりしないように注意が必要です。まずは警察や自治体に相談するのが望ましいです。 張り紙の内容 張り紙の内容が攻撃的であったり、プライバシーを侵害する内容だと、トラブルに発展する可能性があります。もし張り紙を貼る場合は、丁寧で冷静な表現を心がけ、自転車を所有している可能性がある人に対して協力を求める形にするのが良いでしょう。 張り紙を貼ることは一部の場合で許容されるかもしれませんが、法的や倫理的な配慮をしつつ、自治体や警察に相談するのが安全です。 |
②警察に「盗難届」が出ているか確認してもらう
撤去予告の後、警察に「放置自転車があるので、盗難届が出ていないか確認してほしい」と連絡します。盗難届が出ている場合は、警察が対応してくれますが、出ていない場合は持って行ってもらえません。
盗難届が出されている自転車を無断撤去してしまうと🔍 盗難届が出されている自転車を無断で撤去した場合、いくつかの問題が発生する可能性があります。 法的責任の可能性 盗難届が出されている自転車は警察によって捜査の対象となっているため、これを無断で撤去することは捜査の妨害とみなされる場合があります。盗難品の扱いにおいては、慎重な対応が求められます。 所有権の問題 盗難届が出されている自転車は法的には元の所有者に返還されるべきものであり、無断撤去により所有権の確認が困難になることがあります。 刑事責任 無断撤去が悪意を持って行われた場合、窃盗や占有離脱物横領などの刑事責任が問われる可能性があります。 こういったリスクを回避するためにも、長期的に放置されている自転車の場合でも警察に相談し、適切な手続きを経て対応することが重要です。 |
③移動して様子を見る
可能であればアパートやマンションの人が出入りしない場所に放置自転車を移動して、数か月様子を見ます。異動後、1~2か月ぐらいの間だと、「自分の自転車が無くなっている」と、問い合わせが来ることがあるため、別の場所に移動しておけば返却することができます。また、返却の際にステッカーの貼り付け、駐輪場利用についての注意喚起を行うことが可能となります。
④その後の対応
上記手順を踏んだ後、法的な手続きが必要となりますが、実は上記の段取りを踏んだからといって、合法的に処分できるという訳ではありません。
処分には所有者の同意か、所有権が放棄されたことを証明する必要があります。厳密にいえば訴訟を起こして判決を取るのが適切な対応となりますがこれには時間と費用負担がかかります。放置されている側の所有者様が時間も費用負担もかかるとなると、訴訟に踏み出すのは容易ではありません。
以下の対応は適切ではありませんが、上記の流れを行い、最初の張り紙から一定期間経過した後に産廃業者やリフォームの廃材処分のついでに処分を依頼し、放置自転車の撤去を行うこともあります。撤去後に放置自転車の所有者が現れて、もめたケースはほとんどありません。
ちなみに、今回は敷地内の放置自転車について解説しましたが、建物の面している「道路(公道)」にある放置自転車の場合は、多くの行政で撤去を行ってくれます。
駐車禁止区域であればすぐに撤去してくれますが、禁止区域以外の場合は一旦所有者確認の札を貼り付け、一定期間が経過しても札が取られていない場合は撤去してくれます。
放置自転車には法的な手続きが必要ですが、違法に処分することは避け、慎重な対応が求められます。
まとめ
放置自転車についてお悩みをお持ちの管理会社、所有者様は多くいらっしゃるかと思います。放置自転車の対応は時間と労力がかかるうえ、賃貸物件の景観にも影響が出てしまいます。
駐輪場設置場所が公道沿いとなると、近隣の方にも迷惑をかけてしまい、近隣トラブルにもなりかねません。
放置自転車が発生する事で様々な問題が考えられます。
物件の維持管理においてもとても困るものなので、発生しないよう未然防止に努めることが重要となります。
防犯カメラの設置や「無断駐輪の場合は罰金〇万円」と記した看板の設置など、様々な抑止方法を検討し、健全な賃貸管理を実現できるように努めていきましょう。
株式会社LCマネジメント
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