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賃貸マンションの敷地内に無断で違法駐車された時の対処法とは?予防策も解説
賃貸マンションの敷地内に無断で違法駐車された時の対処法とは?予防策も解説
賃貸マンションのオーナーや管理者にとって、敷地内の無断駐車や無断駐輪はよくある問題の一つです。無断で駐車されている車やバイク、原付、自転車があると、入居者が迷惑を被り、場合によっては安全面でのリスクも生じるため迅速な解決が求められます。
今回は、所有する私有地に無断で駐車されてしまった場合の具体的な対処法について詳しくご紹介します。また、無断駐車を事前に防止するための対策についてもお伝えします。
私有地への無断駐車はなぜ解決が難しいのか?その理由とは
賃貸物件の敷地内や駐車場などに無断で駐車される問題への対応は、困難なケースが多いです。ここでは、その理由を3つご紹介します。
- 移動を命じる法的根拠がない
- 警察の対応が難しい
- 「自力救済」禁止の原則
これらの点について、詳しく見ていきましょう。
理由1:警察が私有地での無断駐車を取り締まるのは難しい
公道への無断駐車や放置自転車などには道路交通法が適用されるため、警察が移動を指示し、従わない場合には刑事罰が科されます(道交法第51条第1項・第119条第1項第7号)。しかし、アパートの敷地や駐車場といった私有地に無断駐車が発生しても、道路交通法は適用されないため、警察が移動を指示することができません。これが、私有地での無断駐車への警察の対応が難しい理由です。
ただし、駐車・駐輪されているものが盗品の可能性がある場合や、不法侵入罪や業務妨害罪が成立する可能性がある場合もあるため、「警察に相談しても無意味」とは言い切れません。
さらに、私有地への無断駐車は民法上「不法行為」に該当するため、刑事罰の対象にはならなくとも、民事裁判で損害賠償などを請求する権利があります。
理由2:無断駐車が民法上の不法行為である場合、警察が介入しにくい
前述の通り、無断駐車が刑事罰の対象でない場合、基本的に「当事者間での解決」が求められます。
警察には「民事不介入」の原則があり、個人の権利や財産を巡る問題は、司法の場(裁判など)で解決するべきとされているため、警察が介入できないケースが多いのです。
ただし、この後説明する【対応のステップ】でも触れるように、状況によっては警察に相談できる場面もあります。無断駐車の対応を当事者間だけで行うと、さらなるトラブルに発展する可能性もあるため、早い段階で弁護士などの専門家に相談することで、状況に応じた適切な対応が図れ、解決がスムーズになるでしょう。
理由3:一方的な行動は「自力救済」の禁止原則に違反する可能性がある
私有地に無断駐車されているからといって、勝手にレッカー移動したり、出口をふさいで車両を動けなくしたり、タイヤをロックしたり、または撤去・廃棄したりすることは基本的に許されていません。
これは、日本では「自力救済」が禁止されているためです。「自力救済」とは、司法の手続きを経ずに、自分の力で自分の権利を確保しようとする行為のことを指しますが、これは通常違法とされています。無断駐車に対して乱暴な手段を取った場合、相手の車両に傷をつけてしまうなどで、逆に刑事罰や損害賠償請求を受けるリスクがあるため、注意が必要です。
私有地に無断駐車された場合の対処法
前述の通り、私有地での無断駐車は基本的に当事者間で解決する必要があります。しかし、無断で停められている車やバイク、原付、自転車の所有者が誰か、すぐに分からないことが多いでしょう。
そこで、対応の流れをステップごとにご紹介します。
ステップ1:警察への通報
ステップ2:車両やナンバープレート、登録番号などの撮影と警告文の掲示
ステップ3:所有者が特定できた場合、直接注意喚起
ステップ4:最終手段として弁護士を通じて訴訟
それぞれのステップを順に説明していきます。
ステップ1:いったんは警察に通報
警察に相談することで、盗品でないかの確認ができますし、盗難車両でない場合でも所有者を照会し、警察から本人に対応を促してもらえる可能性があります。
ただ、前述の通り、刑事罰にあたらない事案の場合、警察は「民事不介入」の原則により、個人間のトラブルの解決はしてくれません。
全てのケースにおいて警察が動いてくれるわけではありませんが、状況によっては警察が所有者を照会・連絡をしてくれることもあります。
ステップ3でも説明しますが、例えば、原付のように市区町村への登録が必要なものや、自転車など警察への防犯登録の対象となっているものの場合は、個人はもちろん弁護士経由であっても個人情報を開示してもらえないことが実務上は多いので所有者が判明しない場合もあります。
ただ、警察から所有者に連絡がついた場合は、取りに来て、無断駐車を止める方もいるでしょうし、連絡がついたのに駐車したまま放置された場合は、所有権放棄の意思を推認する材料になったりもするので、有益です。
ステップ2:車両やナンバー、登録番号などを撮影し、警告文を掲示
無断駐車された車両が盗難車でないことを確認した後、車両やナンバープレート、登録番号などの証拠を写真に収めておきます。その後、「無断駐車禁止」の内容を記載した警告文を掲示します。
ただし、警告文を車両の窓ガラスやボディに直接テープで貼り付けると、車両が傷ついたりする可能性があり、その場合、器物損壊罪に該当したり、損害賠償責任を負うことがあります。ですので、張り紙は車両のワイパーに挟むなど、車体を傷つけない方法で行うようにしましょう。
ステップ3:所有者が特定できる場合は、直接注意を促す
警告を無視して無断駐車が繰り返される場合や、長期間放置されている場合は、所有者を特定して直接注意を促す方法が効果的です。
普通自動車の場合、管轄の運輸支局で所有者情報を開示請求することにより、所有者を特定できます。軽自動車についても、軽自動車検査協会に必要書類を提出し、状況を説明することで所有者情報を得ることが可能です。
バイクには開示請求制度はありませんが、弁護士に依頼して、弁護士法23条に基づく照会制度を利用することで所有者情報が開示されます。原付についても、弁護士を通じて照会することが可能ですが、市区町村ごとに対応が異なります。また、自転車については現在、所有者情報の開示を受けることは非常に難しい状況です。
所有者が特定できた場合、内容証明郵便を送り、撤去や無断駐車の禁止を正式に請求できます。ただし、開示された個人情報の取り扱いには十分に注意が必要です。情報は法的手続きのためだけに使用し、直接訪問するなど新たなトラブルを招く行動は避けるべきです。
開示請求手続きは、弁護士などの専門家に依頼することもできます。
ステップ4:最終手段として弁護士を通じて訴訟を提起する
悪質な無断駐車に対して、大家さんが法的責任を避けるための最終手段としては、「訴訟を起こす」ことが考えられます。具体的には、民事訴訟を通じて損害賠償の請求や車両撤去、土地明け渡しの要求を行います。訴訟は本人でも行えますが、専門的な手続きが必要となるため、弁護士に代理人を依頼することが推奨されます。
例えば、2018年には、店舗の駐車場に1年半にわたって無断駐車していた車両の所有者に対して、約900万円の支払いを命じた判例もあります。
ただし、すべてのケースで高額な損害賠償が認められるわけではなく、また訴訟には費用や時間、手間がかかるため、訴訟を起こすべきかどうかは、費用、手間、精神的な負担を考慮して慎重に判断する必要があります。
「相手」が不明な場合、訴訟はできない
ここまで無断駐車の対応方法について説明してきましたが、重要なのは「所有者が特定できない場合、訴訟を起こすことができない」という点です。前述のように、所有者情報の開示が難しい「原付」や「自転車」、またナンバープレートが外されている車両の場合、相手が分からないため、訴訟を行うことはできません。
その場合、対応方法として「遺失物」として扱うことが考えられます。
遺失物として警察に届け出ると、警察が3ヶ月間「遺失物」として公告を行い、その間に持ち主が現れなければ、拾得者がその物件(自転車や原付)を所有する権利を取得できます。その後、所有者として廃棄や処分を行うことができます。
ただし、警察は廃棄目的で放置された車両や、所有者が取りに来る意図で置かれている可能性のある車両については、「遺失物」として受理しない場合もあります。
無断駐車の原因を特定し、その可能性を排除して解決へ導く
車両が無断で駐車されている理由として、①盗難、②廃棄、③一時的な無断駐車(後で再度利用するつもりがある場合)などが考えられます。警察に確認して盗難車両でないことが分かれば、残る可能性は②か③です。このうち、もし車両が廃棄目的で駐車されていた場合、法律上、その車両を最初に占有した者が所有権を取得することになります。
そのため、車両の状態や駐車期間から廃棄された車両だと判断できる場合には、撤去や処分を検討することができます。
ただし、もし車両の所有者がその所有権を放棄していない場合には、撤去や処分によって損害賠償責任を負うリスクが生じるため、廃棄車両と判断する際は慎重に検討する必要があります。
私有地での無断駐車を防止するための対策
無断駐車が発生すると、解決までに多くの時間と労力、さらには精神的な負担がかかります。したがって、無断駐車を未然に防ぐために予防策を講じることが非常に重要です。私有地で無断駐車を防ぐためには、以下の3つの対策を実施しましょう。
1.看板の設置
2.カラーコーンやチェーンの設置
3.防犯カメラの設置
それぞれの対策を詳しく見ていきましょう。
無断駐車対策1:看板の設置
「無断駐車禁止」の看板を目立つ場所に設置することで、無断駐車のリスクを減らすことができます。契約者以外が駐車できないことが明確になれば、私有地だと認識していなかった人々が駐車しないようになる可能性があります。
ただし、看板に「罰金◯万円」と記載されていることがありますが、これには法的な強制力はありません。土地所有者が一方的に設定した罰金を無断駐車者に請求しても、支払う義務は発生しません。実際、過剰な金額を請求すると、逆に恐喝の被害に遭う可能性もあるので注意が必要です。
無断駐車対策2:カラーコーンやチェーンの設置
物理的な予防策として有効なのが、カラーコーンやチェーンを設置することです。駐車や駐輪をするためには、まずカラーコーンやチェーンを取り外さなければならないため、手間がかかり、無断駐車を諦める可能性が高まります。
ただし、この方法は「空いているスペース」に対して無断駐車や無断駐輪を防ぐための予防策であり、すでに駐車されている車両に対してカラーコーンやチェーンで塞ぐ行為は「自力救済」に該当するため、法律で禁止されていますので注意が必要です。
無断駐車対策3:防犯カメラの設置
防犯カメラを設置することで、監視の目があることが無断駐車の抑止力となります。また、実際に無断駐車が発生した場合には、証拠として映像を記録することができるため、後の対応に役立ちます。多少のコストはかかりますが、非常に効果的な予防策となります。
まとめ
私有地への無断駐車は、警察が介入しにくく、無断で対応しようとすると逆に法的責任を負うリスクがあるため、賃貸オーナー様にとって大きな悩みの種です。
無断駐車が発生した場合は、早めに専門家に相談することが重要です。
また、無断駐車の被害を未然に防ぐためには、適切な対策を講じておくことが大切です。無断駐車が起こりやすいのは、管理が不十分な場所です。無断駐車を防ぐためには、所有物件に定期的に足を運び、周囲の状況を把握しておくことが求められます。特に、兼業賃貸オーナー様や所有物件が遠方にある場合、自主管理が難しくなることもありますので、その際は管理会社に委託することを検討しましょう。
入居者様が安心して暮らせるよう共用部の環境維持をすることはもちろんですが、大切な資産を守るためにも、日頃から無断駐車含め様々な問題に対する対応策をとる必要があります。
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